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2005/11/26

耐震強度偽造事件 報道の怪

今回の事件、例によって論点不明のまま余りにも無駄な情報が氾濫し、それに踊らされた感情論が横行している。結論を言えば、福知山線脱線事故と同じ様相を呈しているのだ。怒りの矛先が違うぞオイ。

その1:事実関係曖昧、意味不明な報道の怪

コレだけ連日、マスコミに取り上げられているが客観的事実がほとんどなく、感情的な判断ばかりだ。事実と意見がごっちゃで、一体何が判断できると言うのだろう。客観的事実としては姉歯某の構造計算偽造、建築主名くらいだろうか。後は一見事実っぽく伝えられているが、伝聞推定や意見の域を出ていなかったり、抽象的なものがほとんどだ。

例えば、建築主3社が鉄筋本数を減らせと圧力かけたとの報道、よく読むと具体性と裏付けがない。先ず事実かどうかわからないし、そもそも偽造は3社の物件だけではないから辻褄が合わない。次に、「偽造しろと圧力かけた」のなら分かるが、「鉄筋本数を減らせ」では何の意味なのかよく分からない。普通に考えれば「経済設計しろ」だろう、これがいけない?そんなバカなことはあるまい。過剰設計は無能でもできるが経済設計こそ技術だ。要求して当然と思うが。

夫々の契約関係と時期がほとんど報道されてないのも不可解だ、肝心の上下関係が不明で圧力云々とは、一体どういうロジックなんだろうか。マカ不思議だ。故意に責任判断の根拠を隠しヒステリックな感情論を煽っているようにも思える。皆さん乗せられてはいけません。

また某社長がゴルフ場にいたとか、誰某がリベートを取っていたとか、コレって計算書偽造の事実と何の関係があるのだろうか、そんなことより、誰が偽造に関与したか、何故防げなかったか、後で述べるような売主の瑕疵担保保険はどうなっているのか、事実や客観的情報を知りたいのだ。

その2:論点とプライオリティ不明の怪

この事件でマスコミは何を論点とし、何にプライオリティを置いているのだろうか、人命尊重?そうじゃないだろう、実際は逆を助長しているのだから。人命尊重なら単に居住者ばかりか周辺の安全に関わるのだから、一刻も早く立ち退くよう説得すべきだろう。

ところが、「みのもんた」にいたっては移転費用が一人¥7000では安すぎるとヒューザーの社長を吊るし上げ無制限の言質をとって喜んでいる。安っぽいヒューマニズムにがっかりだ。4人家族なら1日¥28000だ、コレを無制限にすることにどんな意味があるのだろうか、「皆さんホテルオークラで暮らしてください、ところでヒューザー潰れました」じゃ、住民は泣くに泣けないだろう。

huser ヒューザーは今のところ、公的資金をくれではなく、借りて建て替・補強すると言ってるのだから、吊るし上げることよりも、公的資金の融資が受けられるように世論を形成することを優先すべきではないか。マスコミのヒューザー・バッシングは何とかこの会社を潰すことが狙いとしか言い様が無い。何らかの力が働いているのだろうか?結果的に住民を一番追い込んでいるのはマスコミなんだが。

その3:責任追及の怪

この事件、姉歯の犯行はハッキリしているが、彼に責任能力がないことから、金のありそうなところに非難が集中している観がある。ヒューザー始め売主には瑕疵担保の無過失責任があるから確かに仕方ない面はあるが、責め過ぎて潰れては元も子もない。逆にいえば、さっさと倒産させた方が事業者の損害は少ないだろう。

分からないのは、責任追及のロジックだ。マスコミの非難は一般論としての売主責任の一点張りで、具体的に何がいけないのか、どうすべきだったのかが一切論じられていないからだ。過失が無くて責任をとらされるとしたら売主が一番の被害者だろう。それに瑕疵担保保険がどうなっているのか。無過失責任なんだからリスク移転即ち保険以外にリスク管理できないはず、そういう保険がどうなっているのか、肝心なところがボケている。

実はここが一番の問題点で、異常な社会風潮だ。なにしろ、誰もが防ぎ得ない事に責任を問われるからだ。世の中のデベは皆いつ吊るし上げを食うか、住民はいつ事件に巻き込まれるか、保険以外に対策が立てられないだろう。

そもそもこのロジック(一般論)で行けば、住宅購入者←売主←施工業者←検査機関←元受設計事務所←下請け(通常は構造事務所)と夫々に責任を負うはずだが、みのもんたが元受設計事務所をあたかも被害者のごとく扱っていたのも不可解だ。

マスコミは肝心の契約関係やその時期について一切報道しないから判断し難いが、大半において姉歯は元受設計事務所の下請けだろう、ならば設計の責任は元受設計事務所にあることは明らか。お互い専門家であり下請けのチェックが出来ないなんて問題外だろう。この辺はいづれバッシングが始まるだろうが、一番に責任追及されるべきだ。

それ以上に不可解なのは建築確認審査機関への責任追求だ。国家が法のもとにこのようなシステムを作り、設計に関しては官民問わず審査機関が頂点に位置し、設計をチェックしお墨付きを与えているのだから、少なくとも設計に関しては国とこの審査機関が最終責任者だろう。法に基づくシステムで設計をチェックし、その結果に責任を持たないなら、何のための確認申請か意味が無い。これじゃタダの小遣い稼ぎじゃないか。ヤクザのミカジメだって保障はあるぞ。だが、11/23の拙ブログでも言ったように、こんなもの誰も見破れない、性善説が前提の建築確認システムの想像を絶する話だ。責任を問うなら、こういうシステムを創った国だろう。危機管理がなっていない。

最後に。

みにもんたが、あれだけヒューザーを頭ごなしにやっつけるのだから、それなりにウラを取っているのだろう。だったら開陳してもらいたい。まさか大衆受け狙いのパフォーマンスなどと言うことは無いだろうことを祈る。我々一般人には客観的な事実関係が良く分からないので、軽々しく責任追及は出来ないし、下手に擁護も出来ないが、辻褄の合わない点を指摘しておこう。

     ヒューザー幹部社員が家族もろとも問題のマンションに住んでいる事

     ヒューザーの工事発注はかなりが設計の前に出されているとの事

これらが事実だとすれば、コストダウンの為の計算書偽造と言う説は辻褄が合わなくなる。是非ともマスコミ各社はウラを取って欲しいものだ。

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コメント

耐震強度偽造劇(演出 国土交通省)
(事例1)
12月1日は当地京都府でも2件の物件が発覚しました。京都府の見解としてテレビで聞きましたところ、問題の発生がわかってから最初は、担当機関で調査を行い問題なしと発表していたが、今回外部の建設コンサルタントに以来して再計算したところ不正がわかった。また確認審査の時点では構造計算書の再計算の義務はなかったと申しているらしい。ちなみにこの物件は京都府土木事務所が審査しております。
(事例2)
12月2日 事件の渦中にある民間検査機関の社長がテレビで「膨大な内容の構造計算書を確認審査の時点で詳査する義務はない」と発言しております。
(事例3)
12月5日これもテレビで大阪のホテルの耐震強度の偽造が見つかった、ホテル側が独自で再計算を依頼した結果でした。大阪市はその前に問題なしと発表していたらしい。この手の発表は他に多数あり。

行政でも民間検査機関(実質の検査員は殆ど行政出身者)でも堂々と確認審査の過程で構造のチェックをしていない事をのべております。みなさん何かおかしいとは思いませんか!建築確認審査で最も大切と思われる強度のチェックを殆どやっていないことを自ら表明してはばからない彼ら公務員及び元公務員の傲慢さ!何もしていないのだから責任も感じていないのですね。大騒ぎをしているわりには真相は掘り下げられていませんね。もはや人間喜劇を観賞しているようなものではありませんか。立派な官僚を上にいただく我々は、ただ感謝、感謝

投稿: 観客 | 2005/12/06 19:55

名前は忘れたが、この事件についてワイドショーに出演してるしゃべりすぎな社長さん、マスコミはこの人の高そうな自宅を写し、「こんな豪邸に住んでいる」みたいなことを嫌味に言っていたが、事件とこの人の住んでる家がどう関係あるのだろう?このひとが事件に関わって儲けた金で建築した家だというのなら話しはわからなくもないが、現時点で自宅にケチをつけるのは「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」にしか見えない。マスコミは真実よりその場のムードや空気に合ったものを演出したがる。

投稿: 匿名希望 | 2005/11/28 14:21

名前は忘れたが、この事件についてワイドショーに出演してるしゃべりすぎな社長さん、マスコミはこの人の高そうな自宅を写し、「こんな豪邸に住んでいる」みたいなことを嫌味に言っていたが、事件とこの人の住んでる家がどう関係あるのだろう?このひとが事件に関わって儲けた金で建築した家だというのなら話しはわからなくもないが、現時点で自宅にケチをつけるのは「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」にしか見えない。マスコミは真実よりその場のムードや空気に合ったものを演出したがる。

投稿: 匿名希望 | 2005/11/28 14:21

はじめて、自分と似た論調のblogにあたりました。

あとは、爆笑問題の大田光さんくらいです。

投稿: gskay | 2005/11/28 00:27

1

投稿: | 2005/11/26 10:08

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