それぞれの正義(1)
■ものの見方には色々あっても事実は一つ
ものの見方には色々あって、視点が異なれば、当然に解釈や評価も異なるが、対象となる事実自体は何ら変わらない。一流シェフが作った5万円のフルコース料理に対して、ダイエットの敵、美味い、いや美味くなかった、高い、安い、あれが一流か、等々どんな解釈も成り立つが、「一流(と言われている)シェフが5万円のフルコース料理を造った」事実は変わらないのだ。
■議論する「事実」自体が狂っていると、どうにもならない
問題は、真偽や正義を議論するとき、その対象が「事実」であれば、視点によって様々な見解があっても、視点つまり論点を明らかにすることで結論を出しやすいが、その視点の対象となる「事実」自体が狂っていると、どうにもならない。
誰かが告発したことの真偽つまり「何を言ってるか」が問題のはずなのに、「誰が言ってるか」「何の(利益の)ために言ってるか」を議論してしまうと、使う言葉は同じでも全く違う議論となり、視点の修正すらも出来なくなってしまう。
■藤田告発は何を言っているか
藤田社長の告発問題は正にこの典型だ。藤田社長が告発した事実は①「耐震偽装が全建築の15パーセントある」、②「検査機関の告発にも関わらず今もアパグループ等のマンションで耐震偽装が行われている」であり、①は国交省が発表した事実でもある。そして彼は②を、嘘かホントか検証しろと言っている。
念のため言えば①と②は別のことを言っている。つまり①は問題の量の事実、②は今も国が問題を放置している事実をいっているのだ。そして、この事実を論拠に彼の見解として、耐震偽装の責任は国交省にあると言っている。当然に理由と彼の見解(結論)の関係は形式論理的に正しいので、理由が正しければ、彼の見解も正しい。
だから、彼の見解が正しいか間違いかは、件のマンションを検査すれば済む話、毒入りジュースかどうかは飲んで見せれば済むのだ。いくらマスコミで報道されないからといって、Youtubeへのアクセスが世界ベストテン入りし、ネット上で何万ものアクセスがあるのだ。
■今のところ藤田告発は真実
報道されないだけで人々の関心があるのは事実なのだから、事実無根なら無視することのデメリットが遥かに大きいことは明らかであり、事実なら無視か口封じ若しくは認めるしか選択肢はないだろう。今の所前者だから、藤田社長の告発は真実に限りなく近いと判断せざるを得ない。もし検査出来ない理由に、予算や手続き云々を言うとしたら、退去命令まで出した耐震偽装だから、恥の上塗りだろう。
毒入りジュースじゃないなら飲んでみせればよいのに、飲まないから毒入りだろうという簡単なことを言うのに、既に1,050文字だ。ここまで駄文にお付き合いいただいた皆様は疲れたことだろう。ちょいとスピードアップします。
■矮小化
で、こんな簡単な話なのに、簡単に行かないのが日本の社会なのだ。必ず視点どころか本質を外した、「誰が言ってるか」「何の(利益の)ために言ってるか」となって、「有罪になった藤田東吾氏が・・・」「自己弁護のために・・・」となり、話を矮小化されてしまい、そのうち忘れ去られてしまうのだ。
■サル棒ニッポンジンは木を見て森を見ず
このように告発した内容よりも、告発した藤田東吾氏個人に注目し、個人の問題として捉えられてしまうのだ。正に叩いた人よりも叩かれた棒に怒りをぶつける、サル棒ニッポンジンだ。だから、構造計算が必要な建築物の15パーセントに構造計算の問題や偽装があったという、とてつもない「量」の「危険」に気がつかない、いや見ようとしない。木を見て森を見ず、オー・マイガー!
■問題を見えなくするマスコミ
日本人は、ホコリだらけの部屋を暗くしたら、ホコリが見えないから綺麗なんだと納得するらしい。部屋を暗くしているのはマスコミなんだが、そこを懐中電灯で照らすバカモノがブロガー達なんだろうか、マスコミ関係者がどう考えているのか今一つ確証が無い。
と言うのも、売れる為ならルール無視を平気でやるマスコミが、こうも足並みを揃えて藤田告発を無視し、しかしマイナーなJanJanなどが取り上げているからだ。何か強大な権力による圧力なら、マイナーなところは直ぐ潰されるだろう。今後を見ないとなんとも言えない。
ただ、週刊誌さえもほとんど取り上げないところを見ると、ホントに単純に藤田東吾氏個人の問題と捉えているのかも知れない、そういうメンタリティが想像で来てしまい、安晋会云々よりリアルだから迷ってしまうのだ。
安晋会云々が嘘かホントかは、これまた毒入りジュースの疑いと同じだから、このまま騒ぎを大きくしていけば、自ら飲んで見せる以外になく、曖昧にするなら認めたという事になるから、藤田社長をブロガー達が支え、騒ぎを継続すればいづれ分るだろう。
では、強大な権力では無いとすると、闇の将軍様の正体は何だろうか、それは鰯の大群の一匹一匹に意志は無いけれど、群れとしては意志をもっているように、特定の個人や組織とは限らないかもしれないのだ。
明日は、想像力たくましくして鰯の大群を動かすものが何かを考えたい。そこには、ひょっとしてそれぞれの正義があるかもしれないのだ。(つづく)
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コメント
イザヨ様 ご返答ありがとうございました。
私が記した内容は 悪い噂も聞く2ちゃんねるでの様々な方の発言をまとめたに過ぎません。
「偽装」や「藤田」で検索して出てきいたスレッドに於いて、時折まじめな議論がされておりましたので、その情報を参考にして、できうる限り情報源の信憑性を考えた上での私なりの考察です。
考える暇を与えないほどテンポの速いテレビと違い、おのおのの速度でニュースを咀嚼できるインターネットが使えるようになったからこそ、このような事ができるようになったのだと思います。
自分で情報を探す分だけ時間はかかりますが、これもより多くの価値のある情報を収集する方法と考えれば納得がいきます。
最後に、多くの誤字脱字をお許しください。
投稿: 西松 | 2006/11/14 16:04
追記です。
西松様、実に的確で論理的なお書き込み、痛み入ります。
私が言いたかったことを、的確に代弁いただきました。
遅ればせながら、お礼申し上げます。
投稿: イザヨ・ベンダソン | 2006/11/13 22:18
西松様、がぶ様、ココロ様、遅ればせながらコメントありがとうございます。
拙ブログ、文才が無いもので、どうしても長くなってしまい、自分でも一体誰がこんな屁理屈を読んでくれるんだろうかと思いつつ書いております。
確かココロ様のブログにコメントしたかと思いますが、拙ブログの駄文にお付き合いいただいた、実に忍耐強い方を、ここに3名発見いたしました。
これに懲りず、皆様、今後もよろしくお願いいたします。
投稿: イザヨ・ベンダソン | 2006/11/13 22:13
はじめまして。まったくその通りだと思います。
私もこの件について書いたのですが、まだ足りないので
キチンとした補足としてこちらの言葉とエントリーの
紹介をさせて頂きましたのでご報告にきました。
事後承諾ですみません。これからもよろしくお願いします!
投稿: ココロ | 2006/11/13 10:27
初めて寄らせていただきました。私は株の売買をするんですが、耐震偽装関係の話が前面に出ているとき、例えば国会中継とかがある日なんかには、必ず不動産株が上がっている気がします。業種別の値上がり上位だったりしますよ。相場はとても胡散臭いものと認識しているので、いつもやっぱりまずいことがどっさりなんだなと感じます。
投稿: がぶ | 2006/11/12 17:55
イザヨ様 おじゃまします。
naruu様
注意深く呼んでいただけましたら、私が妄信的に藤田氏を擁護していないことがおわかり戴けると思います。 私がもうしておりますのは、すべての事実を明らかにし、その上で罪がある人には咎を受けてもらい、改善すべき点は改善してもらうべきであると言うことです。
1.行動の合理性
川崎市のマンションの件は、このまま販売が続くと川崎市と共にイーホームズも訴えられる可能性がありますので検査する必要があると藤田氏は述べています。つまり、藤田氏にはこの件の解明を川崎市に求める合理的な理由があります。
無関係な藤田氏が人様の財産に横から口出しをしている訳ではありません。偽装の可能性が非常に高いことに気が付いた後で、被害を最小限に食い止めようと、工事がさらに進行するまえに 書面での確認を要請した藤田氏の申し出が 今のところ受け入れられていないと言うことです。
破壊検査をするよりも、川崎市役所の手元にある施行書を見比べる方が迅速ですので、もし検査をするとしてもその後になるはずです。
誤りを犯した者がおり、その誤りの是非はおいておき、その誤りをただすべく取っている行動が 受け入れられていない現状は健全ではないと思われます。
2.陰謀と事実
情報を隠蔽することは罪です。 もし藤田氏の発言の内容に嘘や法的な問題があれば、外国人記者クラブで取材をしたメディアがそのように報じるでしょう。 現在の日本のマスメディアがこの件を取り扱わないことが大きな問題であり、それは藤田氏の発言を信じる、信じないとは別の次元の話です。
マスコミが藤田氏の発言を取り上げない理由は何でしょうか? 藤田氏のおっしゃる政府からの圧力かもしれません。マンションデベロッパーは大切な広告主なので、その線から電通経由で圧力がかかっているのかもしれません。 この偽装の告発が日本の景気に悪影響を与えると考える経済界からの圧力かもしれません。それはそとからでは分かりません。
ですが、結果として分かることは、報道されていない事実であり、偽装の疑いのある住宅に住むというリスクを負わされているのは、マンションを購入した一般人であるという事実です。
3.反証がないこと
藤田氏の内容の妥当性を見る上で、APAグループからの反論がないことが傍証になっております。 藤田氏が耐震偽装で有罪であるという検察の主張は 法廷で否定されました。 現在藤田氏を耐震偽装で有罪であるという法的根拠はありません。
4.誰の利益か?
イーホームズの優劣はさておき、検査機関として欠陥住宅を看過してしまった罪はあるでしょう。 なぜ藤田氏が現在告発しているのか。 動機は自己保身かもしれません。誤りを犯した罪を償うためかもしれません。 ですが、彼の行動は大勢の国民の利益に叶う行動です。 専門家の立場から藤田氏の発言内容について批判していらっしゃる方も、その告発には一定の意義を認める方もいらっしゃいます。 大勢の方は藤田氏の発言が100%正しいとまでは言っていません。 彼の発言には取り上げるべき価値があり、その内容の吟味は必要であると言っているのです。
早急に藤田氏の発言を封印するマスメディアは 国民の利益に反していると考えます。
私でマンションの購入を検討しておりましたので注意深く事態を見ております。 いままでこれほどインターネットを活用したことはありませんでした。
どの勢力が悪いという発言にはあまり興味がありませんでしたが、我々の知りたい情報を伝えないマスメディアには残念ながら失望しております。
投稿: 西松 | 2006/11/11 22:19
naruuさん、コメントありがとうございます。
ご紹介のブログ読ませていただきましたが、残念ながら藤田東吾氏を擁護する意見を批判していることは分りますが、その根拠は全てこのブロガーの見解です。
自分の見解を根拠に見解を述べているので、残念ながら私には、そうですかとしか申し上げられません。
そんな訳で、これがnaruuさんのブログであれば、気を悪くされるかもしれませんが感想を聞かれても、答え様が無いのです。スミマセン。
投稿: イザヨ・ベンダソン | 2006/11/11 16:36
http://blog.goo.ne.jp/nowhere98/d/20061111の意見は全く逆ですが、私には信憑性があると感じます。
どう感じられますか?
投稿: naruu | 2006/11/11 15:16