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2008/07/29

短期連載プロット「終わりの始まり」~滅亡のシナリオ(2)

2008年頃から始まった原油高と食料高騰は、当初は投機マネーによる価格の高騰だけで、石油も食料も供給不足ではなかった。ところがその後慢性化した原油高は、玉突きの玉の連鎖反応のごとく、徐々に食糧生産を圧迫してきた。

食料自給率40%を切っていた極東の島国ニッポンでは、一見不可解な現象が起こっていた。燃料高騰により、漁民は漁をしても採算が取れなくなったため、出漁しなくなったのだ。食生活の変化から、魚離れが進み、値上げすればさらに売れなくなるためジレンマに陥っていた。

そんなわけで2008年夏頃、日本全国一斉に漁を止めたが、ずっと漁を止める訳にもいかず、その後再開したため、人々は漁民が窮状を訴えたデモの一種と捉えた。だが、燃料や物価高騰のアオリを受けていたのは漁民だけではなく、広く国民全体もその影響を受けていたので、漁民たちの窮状に同情したものの、漁民たちだけを救済するのはどうかとの思いがあった。

また、この漁業に関しては、いよいよ日本で食うものがなくなれば、燃料がどんなに高騰しようが、燃料が有る限りは出漁して、魚を捕ることができるし、実際、その後の市場では多少高くはなっても魚がなくなる事は無かった。

このため、人々は漁業の厳しさに同情するものの、この一斉出漁中止は、一生産者団体のデモとして捉えられ、さほどの危機感を持たず、時の福田内閣は全く無策のまま知らん顔を決め込んだ。

だが、同じ事は、農業にも起こっていた。既に日本の農業は、外国からの肥料や飼料輸入に頼っており、これらの高騰が農家経営を同じく圧迫していた。ただ、漁業と異なり、農業ではこの影響にタイムラグがあるためと、世界全体の食糧生産は高騰はしていても落ち込んで無かったため、2008年の時点では、さほど深刻な事態にはなっていなかった。

しかし、農家は肥料等を購入しようにも、高騰して必要量が買えない為、止むに止まれず、生産量を減らさざるを得なかった。結果として、減反どころか大幅な生産調整となって、翌年の農業の国内生産量が激減した。

この事は、事前に分かっていたが、福田内閣は直ぐには結果が出ないし、分かったときには福田内閣は存在しないだろうからと、これまた無策を決め込んだのだ。漁業であれば、市場価格が上がり、漁を再開すれば、即供給量が上がるが、農業はどんなに価格が高騰しても、生産は上がらないため、それまで嫌っていた中国野菜や冷凍食品に頼らざるを得なくなった。

この頃から、世界一成功した社会主義国家と揶揄された日本でも、貧富の差が開き格差社会が定着した。21世紀も半ばに近づく頃、この格差社会は世界共通の現象として様々な問題を生んだ。

かつては貧富の差として、生活レベルの差であったものが、生活そのものが不可能な階層が増大してきたのだ。エネルギーと食料の高騰は、こうした人々を直撃した。政府がいくら生活保護を行ったところで限界が有り、先進国でも餓死者が出始めたのだ。

世界中で、食べる事が限界に近い階層が潜在的に存在し、そんな時20××年の夏、とてつもない大波が来るように異常な高温が世界を襲った。食べるだけで限界だった人々には、エアコンなど無く、餓死者と熱中症死者が続発した。

また同時に異常な階層分離は、人の生命・肉体の安値を招き、売春が蔓延しエイズも蔓延した。同時にこれらはモラルの低下を招いた。各国は義務教育でいくらモラルを教育しても、そこから取りこぼされた人々は、決して少数ではなく、社会全体の不安定さは増す一方だった。

それ以前に、21世紀初頭でさえ餓死者が出ていた北朝鮮では、ますます食糧難となり、いくら核の脅威を振りかざしても、もはや外国から食糧援助など望むべくも無く、一部の特権階級を除いて国民の大半が餓死寸前の状態となった。

右を向いても左を向いても、皆が餓死寸前となると、いくら武力で制圧しても、もはや人民統制は出来なくなった。餓死寸前は兵士にまで及んだからだ。武器を持っている餓死寸前の兵士たちは、武力制圧の矛先をそれまでの国民から、食料を独占していた支配階層に向けた。

地位や権力はもはや何の力も無く、武器を手にしたものだけが食料にありつけるようになり、完全に無政府状態となった。各国のマスコミは金王朝の一族の消息を探ったが、混乱の中、何も伝わってこなかった。

金王朝の崩壊は、あっけなく、暴徒と化した兵士たちに、たちどころに蹂躙され虐殺されたのだったが、その詳細は結局分からずじまいだった。無政府状態となった北朝鮮では、人肉を食うほどに人々は飢えて凶暴化し、国境を越えて韓国や中国になだれ込んできた。

慢性化した階層分離と食糧難は中韓両国においても社会現象化しており、ほとんど野獣化した難民に各国の下層階級も同化してしまい、武力制圧も効果なく国境付近から中韓両国を破壊し始めた。これが、やがて極東各国全土に混乱を広げた。

時を同じくして、中東の各原油産出国の油田は枯渇し始めていた。オイルマネーによって食料を輸入していたが、それもおぼつかなくなってきたのだ。中東紛争は宗教戦争として長引き、妥協の余地が無い事から、殲滅戦争の色合いがより濃くなっていた。

北朝鮮を見限って中東に亡命してきた核兵器技術者たちは核爆弾を開発。もう後が無い中東某国ではジハードを叫ぶ愛国者が、トラックに核爆弾を積んでイスラエルに向かった。運ばれた核爆弾は一つではなかった。そして一斉にイスラエル各地で原爆による自爆テロが決行された。

聖地エルサレムは、焦土と化しイスラエル人ばかりか多くのアラブ人も犠牲となったが、尊い聖戦の犠牲者とされた。放射能に汚染されたエルサレムではあったが、異教徒から奪還し、人が立ち入る事の出来ない聖地として崇められた。

イスラエルはそのほとんどが殲滅されて、建国以来100年をもって滅亡の危機に瀕したが、アメリカを始めとしてキリスト教系国家が救援に乗り出し、世界的な宗教戦争の様相を呈し出した。

第二次大戦後、世界の火薬庫と危惧され続けてきた中東地域だったが、遂に爆発したのだった。だが、皮肉な事に世界大戦勃発以前に、既に世界は破滅していた。先に述べた20××年の夏、とてつもない大波が来るように異常な高温が世界を襲った時、それは起こっていた。

(つづく)

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