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2008/11/04

田母神幕僚長更迭の論点は?

Photo 田母神(たもがみ)俊雄前航空幕僚長が更迭された。アパの懸賞論文で最優秀賞を獲得した論文で、「日本が侵略国家だったとはぬれぎぬだ」などと主張し、発表したことが理由だ。

同氏の論文はこちらを御覧いただきたい。

http://www.apa.co.jp/book_report/images/2008jyusyou_saiyuusyu.pdf

拙ブログは日本軍の侵略はあったとする論調でこれまで来ているが、この論文を読む限り、ふーんナルホドと思う部分もかなりある。

読めばわかるが、非常に読みやすく分かり易い論文で、ほとんど全ての主張に論拠として資料の裏付けを示してあり、客観的な印象を受ける。但し、それらが客観的かどうかは分からない。第3者の調査を論拠とする事は、主観だけではないとは言えるが、その第三者の調査が客観的かどうかは分からないからだ。

そうやって考えると、この論文が主張するところの「日本は侵略国家ではない」という主張はハテナ?かと言えば、そーでもない。第3者の調査をいちいち疑っていては、キリがないし、示されているのは、意見ではなく事実だから、この事実があったかどうかは、さらに調査すればその真偽は直ぐに分かるだろうからだ。

いづれにしても、感情や思い入れだけの大日本帝国肯定論などではなく、非常に筋の通った論文だと思う。

で、田母神氏は、TVのインタヴューに「本当の事を言ったまで、日本は自由に意見を言えないのか」と言うような事を言っていた。

これを聞いた瞬間、えっ何言ってんだ、アンタ幕僚長だろう、政府見解と違う事を言ってどーすんだと思った。で、も一歩突っ込んで考えると、「政府要人は政府(の長)の見解と異なる意見を言ってはいけない」とするのは正しいのか、間違ってるのかだ。

実際どうかと言えば、たぶん程度問題と言うか、発言の影響力によるんだろう。例えば、麻生首相の減税案に対して閣僚からも、一律に商品券を出すのはばら撒きではないかと批判が出るが、これをもって更迭とはならない。

これは内政問題であり、方や幕僚長の論文は外交問題に発展するから、次元が違うと言う事だろう。外交問題になるような内部批判はご法度と言うわけだ。だとすると、世界中がそうなっているのだろうか、アメリカのイラク侵攻を、米軍トップが批判したらどうなるんだろうか。まあ、間違いなく更迭だろうな。

退役軍人が過去の戦略を批判すると言うのはよくあるが、現職軍人が政府と異なる見解を発表すると言うのは聞いた事が無い。

さて、もうお分かりだろう、この問題、議論すべき論点は、田母神氏が論文で主張した内容つまり「日本は侵略国家ではない云々」ではない。この事はブラックボックスで考えるべきであり、その内容の真偽や意見など何の関係も無い。

ブログなどをみると、田母神氏の意見は「けしからん」とか「良くぞ言った」とか様々だが、氏の更迭と、氏が言った内容の真偽や評価は関係ないということだ。

問題となる論点は、現職幕僚が、政府見解と異なる外交上の見解を公表する事の是非である。そして、更迭されたのだから、日本国としては、少なくとも外交に関わる問題に対しては、政府見解と異なる発言を幕僚はしてはならないという事だ。

であれば、その事を明文化できないものだろうか。そうでなければ、国を守るため命を懸けた人々はたまったもんではないだろうし、シビリアンコントロールもおぼつかないだろう。

以上が、田母神氏更迭問題の論点。

次についでだから、田母神氏の主張について少し考えてみよう。結論をいうと、かなりの部分にナルホドと思うし、「日本軍の中国大陸への侵攻は条約に基づく合法的行為であり侵略ではない」との論は一理有り、こういう論理展開もアリだと思う。出来れば日本国政府の公式見解として堂々と主張してもらいたいとも思う。

しかしここで大きな論理矛盾も感じてしまう。ならば、何故その事を政府内部に提言し議論しなかったのか、だ。恐らく、誰も聞く耳を持たなかったからだろう。だとすれば、モノを言えない組織と言う事だ、戦後民主化されてもなお、そうだという事は、戦時中ならなおさら押して知るべしとなる。

そして私自身は、自虐史観を決して良いとは思ってないが、それを否定するには根本的な矛盾があって、それは東京裁判を受け入れてしまった事である。国際的に「アレは侵略戦争でした悪うござんした」と受け入れておいて、いや違うこれこれ証拠がありますと言ったところで、一体何の意味があろうか。

念のために言えば、東京裁判が正しいとか真実を示しているとか言っているのではない。ウソでも真実でも、その提示された事実を受け入れ、それを否定しないまま今日まで来て肯定したままだと言う事。

くどいが、たとえ事実ではなくとも侵略戦争でしたと公式に認め、今日までそれを否定せずにおいて、否定した意見を言う?こんなロジック、一体誰が聞く耳持つだろうか。幾ら言っても再審請求しないで、仲間にオレは無実だと叫んでるようなものだ。

自虐史観を否定するならば、先ず公式に東京裁判を否定しなければならない。さらに言えば、受け入れたのは判決か裁判かなんてのは屁理屈に過ぎず、もしその事が重要ならば誰にも分かる国際常識として見解を確立しなければならない。

さらに念の為言えば、田母神氏のような考え方を否定するものではない、個人の研究者として、是非とも国内世論を喚起し、自虐史観を改善して欲しいとも思う。だがそのプロセスを飛び越えて現職幕僚がそれを言うのはペケだろう。言ってる内容の真偽以前のルール(=東京裁判受け入れや村山談話)違反だからだ。

   

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