CO2削減反対論者の不思議
ここのところ暖かい。とても1月下旬の陽気ではない。そして、年々暖かくなっている。子供の頃は水面に氷が張るのは当たり前。杉並区の善福寺公園の辺に暮らしていた私は、クソガキの頃、冬ともなれば池の氷の上を滑って遊んでいたが、今はそんなこと出来ないだろう。
見えているのに見ていないというか、地球温暖化懐疑論者は、この温暖化現象は自然のサイクルであると言う。或いは、CO2は温暖化の原因ではないとも。水蒸気が温暖化原因という人もいる。
ふむふむ、だから、CO2削減には反対と言う訳か。だが、これはおかしな理屈だと思う。少なくとも、この理屈が正しいとしても、CO2削減反対の根拠にはならないからだ。根拠になるのは、CO2を削減すると気候がおかしくなることが証明された場合だ。
とすれば人為的大気成分の改変が望ましいことになり、自然派改変した方が良いことになる。考えるだに馬鹿馬鹿しい、論理矛盾だ。
あるいは、水蒸気が温暖化の原因だとするならば、何故水蒸気が増えたのか。水蒸気には温室効果があるが、空気中の飽和水蒸気量は気温に比例し気温が高くなるほど増加するから、これが気候変動の単独原因だとするならば、太陽からの熱供給が低下しない限り、常に気温は上昇し続けることになる。とすれば何億年もの間に地球はトンでもない高温になってたはず。
ところが、温暖化現象は最近のことだ。他の温室効果ガスとセットの話だろうと言うことは容易に想像付くと思うが違うのだろうか。そして温室効果ガスのうちCO2が異常に増加している。とすれば、CO2を削減すべきとなると思うのだが・・・・。
さて、ここで100歩譲って、温暖化の原因がCO2ではないとしよう。とりあえず温暖化現象の原因をXとする。このXは地球の気候変動サイクルでも、水蒸気でも、ナンでも良い、自分はこう思う、或いは私はこれだと確信すると言う原因でよい。それは論点ではない。
でだ、話を温暖化から少し離して、「地球の大気成分」について考えてみよう。ありのままの地球の大気成分を人為的に変化させた時、それを放置すべきか、元に戻すべきかを考えるのだ。
地球の大気成分を人為的に変化させて良しとする根拠は、恐らく見当たらないだろう。その変化させた地球の大気成分が、何ら地球環境に変化を及ぼしていないことを証明したとしても、大気成分を人為的に変化させて良しとする根拠にはならないし、ましてや本来の姿に戻すことを否定する根拠にもならないからだ。
例えて言えば、ナンだか分からない緑色の液体を飲まされて、これは何ら体に害は有りませんと証明されても,或いはたとえそれが薬であっても、旨いとか何らかの効果が得られない限り飲み続ける人はいないだろう。
現状では、CO2削減に反対する人々の中に、CO2増加が地球環境に良い影響を与えている、或いは不可欠だと言う人はいない。
ではそのCO2の大気中濃度は、一体どのようになっているのだろうか。産業革命以前は280ppmだった濃度が、現在では380ppmを超えているのだ。CO2濃度は58年からマウナロアで定点観測が開始されたたが、その時の315ppm前後から70ppmも増加して、今や380ppmを超えているのである。
さて、この数字、どう御覧になるだろうか。何億何万年のも間、ほぼ280ppmでCO2濃度は安定していたのだ。しかもその濃度比は酸素や窒素の比ではない。小学校で習ったように、大気成分は窒素が78%、酸素が21%、残り1%の中に諸々の大気成分が含まれている。
大半を占める窒素や酸素ならば、少々の変化があっても濃度が一定と言うのはわかりやすいが、僅か0.028%濃度の気体ならば僅かの変化で劇的に濃度は変わるから、CO2がほぼ一定で何億年も安定していたことは脅威だ。ところがそれが産業革命以降僅かの時間で0.038%と36%も上昇した。
もし酸素濃度が同じ様に変化したなら、20%⇒27%になる。そんな状態になったら、そこいら中で山火事が発生するだろう。ライターでうっかりタバコに火をつけたらブワッと火を噴き真っ黒こげだ。
窒素濃度が同じように変化したなら、78%⇒106%だ。100%で頭打ちだから、酸素濃度は薄くなり大半の生物は死滅するだろう。
つまり、何億年もの間280mmpの濃度を保ってきたCO2濃度が変化したことはそれ位劇的な増加だと言うことだ。そしてそれ以上に驚異的なことは、窒素や酸素のように大気の大部分を占めるつまり母数の大きな気体ではなく、僅か0.028%の気体が一定の濃度を保って来たことの不思議さだ。
窒素の3000分の1の濃度に過ぎない気体濃度を一定に保つなんて、1立方メートルの容器の中で、僅か1年保つことだって至難の業だろう、それが東京ドームの空間となれば不可能だと分かるだろう。
ところが、地球は、地球全体でそれを何億年もの間保って来たのだ。繰りかえすが、大気の8割を占める窒素の濃度ではない、僅か0.028%のCO2濃度の話だ。ものすげー自然のメカニズムであることを、ご理解いただけると思うが、いかがだろうか。
だから、地球温暖化があろうとなかろうと、或いは温暖化の原因が他にあろうとも、このとてつもなく変化したCO2濃度の原因が人類の工業化であることは明らかなのだから、これを元に戻すのは当然の事であると思うし、少なくとも反対する理由は無いと思う。ゆえに、いったい、いかなる見識で、CO2削減に反対するのか。
自然派を自認しながら、自然を自然に戻すことに反対する論理矛盾を主張する人々が、いったい何を求めているのか、何をしたいのか。CO2削減に反対を唱えることが目的化してしまい、意地になっているように見え、私には理解出来ないのだ。
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コメント
皆様、沢山の真摯なコメントありがとうございます。
忙しさにかまけて返答できませんでしたが、まとめて、小生の見解を2009/1/29ブログに書きましたので、御覧ください。
とりいそぎ
ベンダソン 拝
投稿: ベンダソン | 2009/01/29 14:58
BTです。
自分の書いた文章を読み返してみると、ちょっと誤解を生みそうな感じなので補足しますね。
私自身は、現在の状況が温暖化しているか、またそれが有害かはすぐに結論の出ない問題なので横に置いておくとして、現実問題CO2が増えているのは人間が原因であろうという考えです。
それに、過去の地球史で生物の大量絶滅を伴うような大規模な気候変動には概ね大気組成の変動が伴っているのを見れば、何かしら手を打たないとまずいと思っています。(つまり、CO2が増えれば温暖化の要因となるであろうということには異論はありません)
ですから、基本的な立場としては同じであるということは理解していただきたいと思います。要は原因の見立てと対処方法が違うのです。つまり、人間が「直接」(←ここ重要)排出するCO2削減の効果に懐疑的な人は、そもそも増えている原因が違うんじゃない?と思っているから異論を挟んでいるわけです。もっと別の対処方法があるんじゃない?って。(例えば原発建設も排出側が対象なので全体量からすればゴミレベルでは?とか)
たぶん、原因の見立てはCO2が過去に変動してきたのかどうかという見解の相違が大きいのだろうと思います。もし言われるように過去ほとんど変動がなかったのに産業革命以降だけ変動したというのなら言われることも理解できます。
しかし、私はCO2は過去大きく変動してきたし、しかも、それらの多くは生物自身が引き起こしたものだと理解しています。
原生代に地球の二酸化炭素を減らして酸素を増やして大気組成を改変したのはシアノバクテリア、6億年前の全球凍結を引き起こしたのも終らせたのも生物の活動がからんでいるようだし、石炭紀には植物が増えすぎて寒冷化なんてのもあったようです。もちろん原因はそれだけじゃなくて大陸移動やそれに伴う火山活動の活性化(CO2排出)などもあったようですし、17世紀頃の「小氷期」と呼ばれる寒冷化は太陽活動という説が有力です。でも、生物活動による過去の気候変動はそれらと比べても激烈といってもよいと思います。人間が今行っているCO2の排出の影響など足元にも及ばないほどに。
だからといってそれを放っておいてもよいなどとは言いませんが、人類だけがこんな大変なことをしでかしたのだ!というような、ある意味人間を一段高みに置いたような意見を見ると、一言言いたくなってしまいます。それって人間のおごりでは?って。
ただ、人間自身の力は小さいとしても、歴史を見れば生物界のバランスを崩すということは、とても危険なことなのだということが分かります。極論すれば6億年前のように地球全体が凍り付いてしまう、あるいはその直後の超温暖化の可能性すらあるということです。
CO2を排出して「直接」気候を変化させるのは困難そうですが、実は過去の地球にあったように生物界のバランスを崩せばよいのです。小さな力でもテコのように働いて、大きな影響を与えることが出来ます。実行方法は簡単です。CO2を「吸収」する側の生物(つまり植物とか植物性プランクトン)を殺しまくればよいのです。
それが下に書いた熱帯雨林のことです。実際、このままでは今世紀中に熱帯雨林は消滅するという話も聞きます。これこそまさにCO2の変動と比べるまでも無く生物史上まれにみる危機的な状態です。石炭紀以降、地上からこれほどの植物が消えるのは初めてではないでしょうか?これは起きているのかどうか不確かな温暖化とは違い現実に起きていることなのです。熱帯雨林がなくなってしまったら、人間のCO2排出量がゼロになったとしてもCO2の増加はとめられないかもしれません。植物はCO2の吸収どころかO2の供給源でもあるわけですし、過去の地球の気候に大きな影響を与えてきたのですから、これこそ一番先に手を打たなければいけないことだと思います。
そこを問題にせず、全体のごく一部でしかないCO2の直接排出の削減のみをことさら取り上げたり、世間一般の量的に影響があるとは思えない小さなエコに狂奔する様子を見せられると、「木を見て森を見ず」じゃないの?というのが、要は言いたいことなのです。
投稿: BT | 2009/01/29 03:38
ベンダソン様
お久しぶりです。PCを変えたりして、RSS登録から漏らしてしまい、久しぶりに拝見しました。耐震偽装のころは、こちらを見て、報道とのギャップで恐怖におののいておりましたが、段々に色々な情報に慣れてきてしまいました。温暖化懐疑論は、らくちんランプのスパイラルドラゴンさんが確信を持たれおり、また拝見しているいくつかのブログは疑問を持っています。幸い私は、これを専門とされるかたのブログからコメントをいただき、専門家がいうのだから通説で大丈夫だろうと思っているところです。(本当は、エネ資源学会の討論を自分で読んで、査読付きの論文として通っているものを見極められるようご助言いただいたのですが、これに対する批評をいくつか見て、まあよしとさぼってしまっています。)http://www.jser.gr.jp/index.html
耐震偽装のさいのあのかたが、ブログを再開されたとのことですね。
ところで、ベンダソンさんはイスラエルのかたなのですか?年末から年始にかけては、ガザ侵攻が気にかかり、初めてパレードに参加してしまいました。
また拝見させていただきます。
投稿: 散策 | 2009/01/29 01:49
科学的根拠が国の政策を決定した先験的な例を調べたことはありませんが、地球温暖化については少し常軌を脱している印象を受けます。地球温暖化の主原因に決着がついていない段階(仮説のみで実証されていない)でここまで世界規模の政策に影響を及ぼした例が過去にあるのでしょうか。
今はすでに地球温暖化をCO2原因説一本に絞り政策を進める段階に来た印象を受けますが、(もし地球温暖化が悪とすれば)本当にそれだけでことが足りるのか疑問を感じます。また仮説のみでここまで大きな政策決定することには反対しかねます。BTさんがおっしゃった議論すべきポイント3点を少し真面目に各国が検討するべきでしょう(地球温暖化の問題点を整理できる程度のお金をそれら研究に出す)。それをせずに仮説にこだわり一本の政策のみを行っている点にはかなり大きな政治力が働いているのではないかと疑ってしまいます。
素人の意見としては、大きな実験施設(仮想アース)を造りCO2が温暖化に与える影響を調べられないのですかねぇ・・・
投稿: せーじ | 2009/01/28 23:39
人類が登場する以前から産業革命まで、大気中のCO2濃度は変わっていない、というのは本当でしょうか?
もしそれが本当なら、CO2による地の温暖化という説は完全に否定されることになります。
なぜなら、日本の縄文時代、中国で言うと夏王朝から周王朝の時代は、世界的に非常に気候が温暖であり、縄文遺跡は東北地方や1000mクラスの高地に分布しています。また殷や周の時代には象が使役されていたことが分っています。
要するに今よりもはるかに気温が高い時期があったのですが、その原因は絶対にCO2の増加ではない、ということになります。
それから、CO2の削減に反対する人がいるとすれば、排出権取引が投資対象に利用され、サブプライムローンのように大懸かりに証券化されて、またバブルをはじけさせ、市場経済を崩壊させる恐れがあるからではないかと思います。
資源の節約とか、大気汚染の防止という意味なら、別に反対する必要はないかも知れません。
原発の推進という点では、原子炉から出るCO2はほとんどありませんが、ウランの精製過程で大量のCO2が排出されており、あまり効果がありません。
投稿: 珍県民 | 2009/01/28 00:18
きましたねぇ〜久々に。。。
最近はめっきり減ってきたと思ってたんですがね。
地球の温度なんて大気の組成ばっかが原因じゃない。もっと大きな力が影響している。そう、太陽。太陽活動や黒点活動がちょっと変わっただけで、地球の大気が云々なんていうのを吹き飛ばすぐらい地球の温度に影響が出るのに、CO2で大騒ぎさ。
あとCO2が増えていいという意見もいくらでもありますよ〜今より可住面積や可耕面積が増えるんですね、但しそのほとんどは元東側とか第三国といわれる国々。不都合なのは先進国ばかりなり。必死こいて奪ってきた心地よかった土地が暑くなり、寒いからくれてやる、と被差別民にくれてやった土地が心地よい土地になる、っていうんだから、面白くないでしょうね。
ツバルが沈むというのは、月との関係で潮の干満が激しくなったこと、という説もあるし、あくまでもCO2の増加は温暖化の原因のうちの確証されていない各説のひとつでしかない、ってこと。それを確定説のように煽っているのは、先進国、いわゆる白人生活地域にのみ恩恵があることだから。耳障りはめちゃくちゃいいしね。
あんたらしくないね。
投稿: きましたね〜 | 2009/01/26 15:26
いつも読ませてもらっております。
通常は、なるほどということがほとんどなのですが、ことCO2の件に関しては以前もコメントしたのですが、賛同しかねる部分があります。
たぶんこれまで書かれた文章等から読みとると、批判されているのは自然派なのに原発反対派の人のように思いますが、私は原発についてはどちらでもない中立な立場なので、なんだか原発を肯定するために論理が少し飛躍しているように思えます。
まず、CO2削減反対論者というのは本当に居るのでしょうか?とは言え、もしかすると私もCO2削減反対論者にカテゴライズされてしまうのかもしれませんが、イデオロギーのない人間からすると本来の目的はCO2削減ではなく温暖化防止ではないの?と思ってしまいます。
で、その手法として人間の排出するCO2削減が妥当なのか、それとももっと他に効果的な方法はないのか?というのが議論の仕方としては正しいと思うのです。それなのに、いきなり手法に対する賛否を問われても???となってしまいます。
私が、以前書いたコメントでは、そういう意味から冷静に議論すべきポイントを3点挙げました。
(1)本当に温暖化しているのか?
(2)しているとして、その原因は何か?
(3)温暖化したとして、果たして害なのか?
はっきり言って現状では1と3はすぐに答えは出ません。
2については色々議論があるでしょうが、たぶんこのブログで言われているのは、原因がよくわからなくても何もしないよりはした方がよいだろうということでしょう。確かも私もそう思います。が、その手法がザルで水をすくうようにほとんど効果がなさそうな手法であったとしたら?また、もっと効果がありそうな方法があるとしたら?ということを言いたいのです。
はっきりと書くならば、私の個人的な考えは以下の通りです。全てが科学的なデータに基づいているわけではありませんが、恐らくそれほど外れていないだろうと思っています。
1.人間の出すCO2の排出量の増加の影響などたかが知れている(根拠は前回も述べましたし、他のサイトなどでもよく出てくるデータです。従って、削減努力はしないよりはよいが、むなしい抵抗の可能性が高いということになります)
2.CO2が増えているのは事実だが、その原因は人的なCO2の排出量が増えたからというよりも、自然界のCO2の「吸収量」が減って自然界の収支のバランスが崩れたのが主因と考える方が自然。(もしかすると水蒸気など他の変動かもしれません)
3.吸収量が減った理由として、最近の急速な森林破壊が無関係とは思えない。結果としての森林面積の減少速度を見ると、最大の原因であろうと思われる。
4.この立場に立つならば、最も効果的な対策は森林を再生することであり、優先すべき(予算をつけるべき)は森林対策と森林伐採をしなくても良いシステム(電子化を推し進めて紙を極力使わない、リサイクル体制等)の確立である。
私はこのように考えています。従って、本当に温暖化を防止したいなら、先進国は熱帯雨林を持つ国々に熱帯雨林を保護してもらう、更に言うならば昔に戻してもらうためにお金でも何でも渡して頼むべきです。また、自国ではできるだけ紙を使わなくて良いように持っていくような税体系を整備すべきです。それだけでかなり変わると思っています。
あと、地球の歴史上、CO2濃度の変動がなかったのに人類出現以降のみ変動しているじゃないかというのが人的な排出が理由と考える根拠にされているようですが、どこのソースでしょうか?私の知る限り、また検索で調べた限りでは地球の歴史上、CO2の濃度は大幅に変動しています。
例えば次のサイトでは「岩波地球惑星科学講座13,1998年」を出典としてCO2の変動を説明しています。
http://www.s-yamaga.jp/nanimono/chikyu/taikitokaiyonorekishi.htm
投稿: BT | 2009/01/26 14:24