「してもよい」は「しなければならない」ではないのだが・・・
しばらくブログ更新に間が空いてしまった。なんか知らんがやたら忙しくなってしまい、仕事を断るのに四苦八苦している状態だ。じゃあ、ものすごく儲かっているかと言えばそんなことはない。ま、いわゆる知的労働については、いづれ書いてみたいと思うが、今日の話題はモラトリアム法案でいこう。
「中小企業等金融円滑化法案」いわゆるモラトリアム法案が、20日未明の衆院本会議で民主、社民、国民新、共産各党の賛成多数で可決され、参院に送られた。
で、久々にTVを見ていたら、このモラトリアム法案、いたって評判が悪い。どういう風に評判悪いかというと、何やらボーナスが出ない30代のサラリーマンが登場し、返済猶予されたからとて、後で返さなければならないのに、3年後に景気が回復してる保証はないから意味がないと言う。フムフム、なるほど(内心、バカかと思う)。
画面は変わって、今度は中小企業の社長さんが登場、返済猶予ったって、返さなきゃならん。そんなことより景気回復だよ、と。で、件の番組に登場する人々は、モラトリアム法案なんて、一時的な返済猶予だから根本的な解決になってないから反対だ、みたいなことを言う。
フムフム、一見もっともに聞こえる。(そのとおりだけど、じゃモラトリアム法案がなけれな景気回復するの?なんて突っ込みたくなる)今、ここに書いていることはたまたまモラトリアム法案を話題にしているが、実は何でも良い。拙ブログの論点は、実はモラトリアム法案の是非ではなく、その評価ロジックなのだ。
つまり、ある人々にとって意味がない、役に立たない。だから不要だ、との論法が堂々とまかり通っていることへの警鐘だ。人それぞれ事情はあるだろうし、さまざまな考え方はあるだろう。だからそれは認める、それが民主主義というものだ。だが、自分がこう思うからと、そこに他人を巻き込むのはいかがなものか。何様かは知らないが、そんな権利アンタにないだろうと思う。
モラトリアム法案を例に取れば、3年間返済猶予されても、結局はその分多くの返済が待っている。それはそのとおりだが、それに意味がないというならば、猶予を受けなければ良いではないか。いったいモラトリアム法案が成立して何の不利益があるのか、何が変わったのか。
猶予を受けられるということは、猶予を受けなければならないということではない。「してもよい」は「しなければならない」ではないのだが、この区別はそんなに難しいのだろうか。
猶予を受けたい人は受けられる可能性があるということに対して、自分には必要ないから、あるいは価値を見出さないからと、他人の可能性や要望を否定してしまうロジックには、ほんと首をかしげてしまう。
物事を否定し、禁止しようとするならば、その行為がどのような害を他人に与えるかが論点となるはずだ、自分に必要がないからと否定できる世の中では、ただただ住みにくいだけになってしまう。
自分は車の運転をしないから、乗用車を禁止してしまえなんてことが、まかり通ったらたまらんだろう。自分を中心に、皆が自分の価値観を他人に押し付けるようでは、その価値観がオーバーラップしてぶつかり合い民主主義は成り立たない。
自由とは、他人の自由・価値観を尊重してこそ初めて成り立つものであることは、小学校できっちり習ってるはずなんだが、そういう基本的なところが、この国ではあまり常識として定着はしてないようだ。
よく、喫煙の自由を言う人を見かけるが、はっきり言って、私はバカですとふれてるに等しいと思う。はい、確かにあなたが喫煙する自由はありますが、他人に喫煙を迫る権利は無い。だから吸うのは勝手だから、自分だけが吸うようにして他人に煙を浴びせないよう、人のいないところで吸ってくれ。と、ここまで言わなければ分からないのだろうか。
ある部分観だけで、物事を推し量り、それを平気で主張する。そういう人を見ると、汚い言葉の繰り返しで恐縮だが、バカに付ける薬は無いなと思う。
で、再びモラトリアム法案に戻るが、自民党は、これを強行採決だと怒っているようだ。では自民党諸氏に聞きたい、強行採決の定義は?そこでこちらの記事をご覧いただきたい。
http://www.asahi.com/politics/update/1120/TKY200911190534.html
<引用開始>
返済猶予法案、採決強行で衆院通過 自公は反発、退席2009年11月20日1時13分
中小企業や住宅ローン利用者を対象に、金融機関に借金の返済猶予を促す「中小企業等金融円滑化法案」が、20日未明の衆院本会議で民主、社民、国民新、共産各党の賛成多数で可決され、参院に送られた。自民、公明両党は本会議での採決を前に退席した。与党は残るすべての内閣提出法案を20日に衆院で採決する構えも見せており、野党の反発はさらに強まりそうだ。
19日昼の衆院財務金融委員会で、与党が同法案の採決を強行したことに野党が反発。自民党は同委員会の玄葉光一郎委員長と衆院議院運営委員会の松本剛明委員長の解任決議案を衆院に提出した。
返済猶予法案の実質的な審議は18日に始まったばかり。社民党の重野安正幹事長は19日に「法案成立に全力を挙げるのが与党としての任務だと割り切っている」と語ったが、自民党の大島理森幹事長は「なぜこんなに急ぐのか。国会のルールを政治主導でむちゃくちゃに変えるのは許されない」と批判した。
採決のための本会議をめぐり、与野党は19日夜まで断続的に協議を続け、本会議開会は午後9時過ぎにずれ込んだ。玄葉、松本両委員長の解任決議案は与党の反対で否決された。
与党は20日の参院本会議で返済猶予法案の趣旨説明をする方針。さらに与党は20日午後の衆院本会議で、国家公務員給与改正法案、インフルエンザ対策法案、郵政株式売却凍結法案、北朝鮮貨物検査法案など内閣提出の残り11法案の採決を強行する構え。民主党の山岡賢次国対委員長は「明日はやるべき法案を衆院の委員会、本会議で可決する固い決意で臨んでいく」と語った。
鳩山由紀夫首相は19日夕、「経済が厳しいという状況で、やむにやまれずという思いだと思う」と首相官邸で記者団に語り、採決強行への理解を求めた。
<引用終わり>
TVでも大島理森幹事長は「なぜこんなに急ぐのか。国会のルールを政治主導でむちゃくちゃに変えるのは許されない」と憤慨していたが、バッカじゃねーのと思う。だって、「野党の反発はさらに強まりそうだ。」と書いてあるけれど、野党って自公のことじゃないの。
「民主、社民、国民新、共産各党の賛成多数で可決され、・・・」てるんでしょ。反発しているのは野党ではなくて、自公じゃん。そもそも反対するならば何がオカシイのか、どうあるべきかを言わなくちゃ。
ただ、自分たちがボイコットしておいて、強行採決だと勝手な論理を人に押し付けるのは、喫煙の権利を主張するのとどう違う?退席するのはあなた方の勝手かも知れないが、手続きの印象操作に躍起になる前に、自分たちの主張を出来ないものか。まか不思議な感じを受ける。
別に、自民公明に限らず、そしてモラトリアム法案に限らず、ルールを創り人々が行動しようとするときに、それに異を唱え阻止しようとするならば、何がいけないか、どんな害があるのか客観的根拠を示して、改善策を主張する。そういう基本的な事が、この国ではまだ出来ないのかと思うと情けなくなる。
反対するだけならサルでもできる。何でも反対の共産党ですら賛成した法案に反対する理由はいったい何なのか、自分たちが勝手に仕組んだ手続きを盾に手続き論でしか反論できないとしたら、これまた付けるクスリがないではないか。
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コメント
○鉄馬様、コメントありがとうございます。
>でもマスコミの街頭インタビューは与党批判のものを抜粋している事も考えられます。産経、いえフジテレビとNHKは特に。うーんTBSもかな。テレ朝もかな。全部かな・・・。
⇒いや、全部と見てしまうとトンデモ・マスゴミの思うつぼなので、もし、けなすなら産経にターゲット絞った方がよいかも。と思います。
○らむちゃのパパ様、コメントありがとうございます。
⇒本文にも書きましたが、マスコミはモラトリアム法案と景気対策をゴッチャにしています。マスコミ含めて今の日本では議論している論点と異なる論点を勝手にまぜこぜにして論じてしまう風潮があり、これに乗せられないよう、あるいは同じ轍をふまぬよう注意が必要です。
○とし様、コメントありがとうございます。
⇒過去ログに書きましたが、日本では羞恥心さえなくせば、理が無くても勝負できる殿下の宝刀があり、それが地続論と喧嘩両成敗です。いづれも論点の中身とは全く無関係に定型化された論法なので、知能はほとんど必要ありません。理の無い生き方をしている人は処世術としてこれを身につけています。
分かりやすく言えば、田舎のオッサンたちがよくやる手続き論、たとえば、「挨拶ねー」とかの類です。今回自民党が言ってるのは、まさにコレで、中身の主張が無い手続き論であり、しかも批判している状況を自分たちで作りだしているところがイタイですね。
国民はバカだから、そういう構図は理解でないと思っているのでしょう。しかし理解できて見破ってしまう国民も少なからずいるということですね。
投稿: ベンダソン | 2009/11/24 10:38
おひさしぶりです。
モラトリアム法案の強行採決に関して私が考えたのは、
「確かにあれは強行採決だったのかもしれない。だが、強行採決という事実を決定づけるためには、自公側が採決の時まですべて参加して主張していなければならない。よって、今回のケースを強行採決と定義することは、第三者である我々も、まして、自公にも決めつけることはできない。」
です。
もし、今回のケースが本当に強行採決であるならば、自公は最後まで参加すべきでした。自公にしてみれば、それが本当に強行採決であれば、最後まで参加することによって、その印象をマスコミを通じて植え付けることが出来、与党側にダメージを与えられるチャンスであったにも関わらず、採決前に出て行ってしまった。どうも、彼らは、与党時代のクセが染みつきすぎていて、野党としての戦略がまるで立てられていないようです。「どうせ自分の思い通りにならないんだったら、参加しない方がマシだ。」程度の考えだったのでしょう。子供です。いや、子供にも失礼なくらいです。
少なくとも、2006年の安倍政権時における、公務員制度改革法案?の強行採決の時には、野党側は採決の時まで取っ組み合いをして防ごうとしました。確実にそれが強行採決であることを印象づけることができました。あれくらいやらないとダメなんです。強行採決を印象づけるのであれば。
あと、今回の採決の光景を、自公の言った通りに「強行採決」と記事にしてしまうマスコミ。
意図的かどうか?ということを超えて、「頭が悪い」としか言いようがないと思ってしまいました。
こういう人達に、一般市民から集めたお金の一部が、給料として使われているというのを考えると妙にイライラします。
一部の天下りと同じくらい無駄のように感じてしまいます。
また来ます。
投稿: とし | 2009/11/21 11:08
ブログ主さんのおっしゃる通りですね。しかし、自公は、自分たちが政権にあった時、散々強行採決と2/3の数を頼った再議決でたくさんの悪法を世に送り出しておきながら、どの面さげて異議を唱えているのかと思います。
マスコミも、民主政権の政治に悪印象を与えて報道したくって、偏ったコメントを流しているのでしょう。この冬、ボーナスが激減してローンの支払いに困っている人には、この法律は朗報だろうと思います。返済延期もさることながら、景気をよくして欲しいというのも人情ですが、公共事業を発注してもらっても、その恩恵を受けられる人も限られています。個人的には、太陽光発電の電気の買取価格をもっとあげて、銀行に設置費用を融資させる仕事をさせて、個人や企業の社屋に太陽光パネルを設置させる事業を積極的に推進させたら良いと思うのですが、この国は、天下りの外郭団体にお金が流れる仕組みがない事業はやらないですから、未だに他国のように普及しないのですね。
投稿: らむちゃのパパ | 2009/11/21 02:28
こんばんわ。
自分が社長と考えてみて、おっしゃるとおり、利用しないつもりで経営する。
でも、イザと言う時の選択肢が増えるのは非常にうれしく、安心、そしてありがたい。
でもマスコミの街頭インタビューは与党批判のものを抜粋している事も考えられます。産経、いえフジテレビとNHKは特に。うーんTBSもかな。テレ朝もかな。全部かな・・・。
投稿: 鉄馬 | 2009/11/21 00:30