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2010/11/12

尖閣ビデオ流出は何の話?

今に始まった事ではないが、世を上げて大騒ぎしている時、いったい何を問題としているのか、単語に反応するばかりで、その実、論点が不明のまま議論沸騰する事が多い。これ、結果として指桑罵槐(※)となり、特に耐震偽装事件以来ひどい。

※ 指桑罵槐:本来は孫子兵法の中の二十二計「強者が弱者を屈服させるときに警告する方法」だが、ここでは「本当の怒りの対象とは全く違うものを攻撃する」という意味。

今回の尖閣ビデオ流出事件もそうだ。「尖閣ビデオ」「中国船の衝突映像」と言う単語にそれぞれの思い込みで勝手な反応をして、何やら議論をしている気になっているが、政治家も評論家も何が言いたいのか、よく分からん。

何、ベンダソンは何を言いたいのかって?はい、言いましょう。先ずは1センテンス1イシュー(論点)で考えましょう。複数の論点を一緒に議論してはいけません、何を議論しているのか分からなくなり、タダの放言になりますよ、ということ。

とにかく、或る事象について語る時は、その事象についてどういう論点で何が問題なのかを明らかにしなくては、何言ってるか分からないではないか。アナタがトマトを食ってるとして、その事を議論するとき、トマトの「色」なのか、「栄養」なのか、「形」なのか、「歯触り」なのか、「味」なのか、「料理のしやすさ」、「値段」なのか、はたまたアナタの「食い方」なのか、「文化」なのか、「作り方」なのか、何について話をするのかを明確にしなければ議論は噛合わない。

アナタは「トマトは美味いと」思って「トマトはスバラシイ」と主張してるのに、民族原理主義のBさんは「そんな事は無い、トマトは日本古来の野菜ではないじゃないか、どこがスバラシイのか」と主張し、農家のCさんは「じょーだんじゃない、トマトは家庭菜園でも作れるからスバラシクない」と主張する。一方家庭菜園派のDさんは「簡単に栽培できるのでスバラシイ」と主張。トマトという単語は共通するが、その実トマト自体の認識が全く違うから永久に議論は噛合わない。全くの時間の浪費だ。

たかがトマトを食っただけで、ナンボでも論点が出てくる。だから何についての議論なのかを分解整理しなければ、そもそも議論は成り立たないのだ。これは何を話すかだから議論の余地が無い。次に、それぞれの論点に対して優先順を決め、議論するべきだろう。

その前提には、価値観・価値判断の指標が有るのは言うまでも無い。例えば、尖閣でぶつかって来た中国漁船の船体が青だったがアレは中国だから赤であるべきだと主張したら、アホかと言われるだろう。誰がどう見たってそんな議論は見当違いと分かるからだが、ではビデオ流出についてはどうだろうか。事がセンセーショナルになるとそちらに目が奪われ、たちまち皆が勝手な事を言い始める。

ではこの一連の事件、論点をどう整理すべきだろうか。先ずは、価値指標から明らかにしたい。最優先すべきは、国益だ。誤解を恐れずに言えば、人の命より国益だ。もっと具体的に言えばこの場合は領土の確保・保全だ。だから戦争で人の命が落とされるのだ。人命が領土より優先するならば、領土争奪の戦争は起こらない。だから一連の尖閣問題では、先ずは領土の保全が最優先すべき価値指標だろう。

今回の一連の事件では、領海侵犯した中国漁船の拿捕のように、国家として領海侵犯を許さないと言うこと、これが最優先すべき価値だろう。その意味では拿捕(という言葉が妥当かどうかは置いといて)は妥当な措置だったはずだ。何しろ国境警備は全世界に共通する価値判断と行為だから、異論あるハズが無い。

次がほぼ同列で、国家のガバナンスだと思う。国家の国土・国民に対する統治能力が無ければそもそも国家は成り立たないからだ。その意味では一見最上位に来そうだが、内政のレベルの問題なので、やはり領土保全が最優先だろう。

今回の一連の事件では、中国船長釈放の是非がこれに当たる。中国漁船の領海不法侵入が事実として(もしこれが事実でなければ、拿捕自体に遡る日本の不祥事となるが、今一つ肝心なところが報道されず、正確な報道が無いのが気になる)、逮捕した船長を、表向きは司法当局が独自の職務判断で釈放した。

となると、逮捕した事が間違いでなければ、法治国家としては、この司法判断は成り立たなくなる。しかし、漁船の拿捕船長の逮捕は前原国交大臣の指示であるとも報道されているから、これは政府判断だから法解釈ではない。それを一地方検察庁が法解釈で否定してしまう?こうなると国家のガバナンスはどうなっているのか、訳が分からなくなってくる。

これって、大問題のはずだ。国家の最高責任者の判断を、末端の地方検事が覆してしまう。しかも、その事が国会でも、さほど大問題になって無い。むしろ流出ビデオの犯人探しや情報の管理責任が問題になっている。ハア?だ。

国家として統制が効かない事実を無視しておいて、その末端の1事象である情報漏えいを眼の色変えて議論する?いったい何が問題なのかマルで分かってねんじゃね。

どーも、世の論調はビデオ流出を歓迎しているし、事実小生も有難いと思っている。だがその事と、ビデオ流出の是非は何の関係も無い。義憤に駆られてなのか、愉快犯なのか、そこは問題ではあろうが、それは裁判における情状酌量の材料でしかなく、事実の是非と動機はあまり関係ない。

いわゆる不正を暴く内部告発ならば、何としても「犯人」を保護しなければならないが、こういう個人の判断で、統制されているはずの情報を公開する事が正当化されるならば、中国国民の愛国無罪とどこがどう違うのか説明がつかなくなる。では、不正を暴く内部告発であったらどうか、当然にそうであれば、愛国無罪とは訳が違う、不正をただす行為であり法にも規定が有る。

ではもう一度、このビデオ流出事件を、本当に愛国無罪のレベルなのか、不正の告発なのか検証してみよう。その場合は、ビデオに写っている告発しようとしている内容が問題となる。でどうかと言うと、中国漁船が日本の政府船に体当たりをかましてるのだから、どう見たって公務執行妨害だし、そもそもGPSデータからも領海侵犯なんだろ。だから海保はこれを拿捕逮捕したのだ。それを違法に那覇地検が釈放してしまった。つまり那覇地検は違法行為を働いた訳だ。

あれれ、じゃ、この流出ビデオは、那覇地検の違法行為を告発するビデオ?だったら、告発者を処罰するのはお角違いだ。処罰すべきは那覇地検の責任者じゃないの。違うかね?だって政府は釈放に関与してないんでしょ。

ヤクザの親分が殺人を犯したので刑事が命がけで逮捕したら、検察幹部が勝手に裁判もかけずに釈放したとなれば、大騒ぎになり、フツーはこの検事が逮捕される事が有っても、告発した刑事が逮捕されるなんて事はあるまいよ。

事は、国家の領土を犯す大罪だ、ヤクザの殺人事件より大問題のはず。そう考えれば、誰がビデオを流出したか、守秘義務がどーたらコーたらなんて事が何故問題になるのか全く不可解だ。そんなお事より、このビデオでもって、明らかになった、大罪を犯した犯人を釈放してしまった大犯罪者を何故に放置しているのか、この国の国民もマスゴミも政治家もバカと阿呆の集まりではないかと思ってしまう。

今日も国会では、守秘義務違反ではないかと質問され、仙石長官は裁判資料だから守秘義務の対象と言っていたが、その裁判を起こすか否かを判断する検察が被疑者を釈放しているのだから裁判は有り得ない。存在しない裁判に何故証拠が存在するのか、ロジックが成り立ってない。それとも専門的には成り立つとでも言うのだろうか、・・・・う、頭が痛くなってきた。

何度も言うようだが、船長釈放は政府判断ではなく、一地方検察の職務判断なのだ。つまり法に基づく職務の執行なのだから、そのビデオが事実を曲げているならともかく真実ならば、どんな内容であっても秘密であるハズが無い。

ところが、ビデオの内容は事実を伝えたばかりか、その内容が司法当局の違法行為の証拠とも言える内容であり、その内容を知った上で政府がこれを機密扱いとするならば、知られては政府が困る内容であるということになるが、では何が知られては困るのだろうか。

だって、船長釈放は政府判断ではなく、一行政庁の職務判断なんでしょ。そりゃあ、一行政庁といえども、最終的には政府の一員だから政府の責任とは言えるが、少なくとも政治的判断ではなく職務判断なんだから、これを即政府の責任だなんて言い出したら、国政は成り立たない。

だってそうだろう、お巡りさんが何か違法行為をしたからって政府閣僚が責任取るか。大阪地検特捜部が証拠改竄したからって、法務大臣が責任取るか。政府が直接指示したり関与してもいない事で、政府の責任云々なんて事はフツーは聞かない。

まして今回は、那覇地検の違法行為だ。中国に害を与えた訳ではなく、中国に利したのであるから、釈放前ならともかく、釈放後にこのビデオが明らかになったとして中国が困るはずもない。となると外交上中国を刺激するから公表できないとする政府の見解は成り立たない。

成り立つのは、日本政府船が違法に中国漁船を拿捕したり攻撃していた場合だ。この場合は釈放は当然だし、なんて事を日本政府はするのかと世界の非難を浴びるから事の善し悪しとは別に、秘密にするのは理屈として成り立つ。だが事実はそうじゃない。

ところがもう一歩踏みこむと、政府首脳は、この那覇地検の判断を、事後承諾し、支持してしまっている。となると釈放は政府の政治的判断ではないが、釈放自体は適法な職務行為であるとしている一方で、適法な措置ではない事を知っていたことになる。

と言う事は、結果的に不作為の作為で、違法行為に政府首脳が加担したが、その証拠になるので秘密にしていたい、と言う解釈になるのではないか。そうでないならば、何故このビデオが機密扱いなのか、誰か説明願いたい。

結局のところ、外交上の機密みたいに言ってるが、政府首脳の判断ミスを知られたくないからの秘密であって、外交上は何の影響も有るとは思えない。むしろ中国は、右でも左でも好きなように、ビデオ流出事件を利用するだけだろう。例えば・・・、

もし、中国が中国漁船の不法行為を批判されたら、中国が船長釈放を求めたのはビデオ公開以前だから、この事は知らない訳で、自国民が自国の領海内で日本に拿捕されたなら釈放を求めるのは当然である上、日本の司法当局がビデオの事実を承知の上で判断した事だから、今更中国には何の関係も無いと言うだろう。

もし中国が積極的にこの公開ビデオを外交カードに使おうとするならば、いったん落ち着いた決着を何故このような機密の漏えいでご破算にするのかと日本政府をなじることもできる。何しろ機密扱いにしたのは日本政府であり中国政府は知らなかったのだから、中国当局は、公開するなら何故釈放以前に我々に見せなかったのかと言う事も出来る。

中国政府としては、尖閣は中国の領土だから、船長の釈放を求めたが、体当たりしたことまでは事実としては知らなかった。体当たりするとすれば日本政府船から不法に拿捕されるからだろう。そして事実、体当たりした事が明らかなのに、船長は日本の法律でも裁かれず司法当局によって釈放されたのだから、日本の法律でも逮捕が不当であった事は明らかだ。とも言える。

どうシミュレーションしても、船長釈放後にビデオが公開されて、中国が困ることなど考えられないどころか、中国に有利なだけだ。さりとて公開されなければ中国に不利かと言えば、それも無い。

要はビデオ公開は、中国にとってどうこうではなく、日本の政府首脳にとって不利であると言う事なのだ。日本政府首脳にとって不利だから結果的に中国に有利なのだが、その状況を招いたのは、船長釈放を外交ではなく司法当局の職務判断と位置付け、さらに証拠をその後機密扱いにしてしまった日本政府首脳の自縛の自爆によるものなのだ。

菅内閣の根っこを見ずに、常に小手先で誤魔化す、そういう心根が危うい。この事を同じ党内の代表選に政治と金を持ち出すやり方に見えたので散々指摘してきたが、危惧した事がどうしようもないほどこうした局面に現れ国を危うくしている。

もう、どう考えたって、前原、仙石、菅には付ける薬が無い。次の内閣などと悦に入っていたお子ちゃまが、目の上のタンコブの小沢を排除したら何でもできると勘違いし暴走してしまったようだ。

政治とは全く無縁のあるパーティで、最近の菅総理のバカ面が気になると言ったら、政治にはトンと関心無い面々が皆同じ事を言ったので驚いた。みんな見てるのかもしれない。永田町と言う限られた地域では政治と金などと小沢批判をしていれば、与党も野党も安心なんだろうが、国民は何時までも騙されっぱなしではないのかもしれない。わからんけど・・・。

ふう、本日これにて、

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コメント

丸井太輔様、コメントありがとうございます。

この事件は、専門的には報道されている通りだと思いますが、法律論云々以前の常識的なロジックとして指桑罵槐です。法律的に那覇地検に問題が無いとすれば、法律が間違ってます。勿論その裏には政府の介入が有ったのは明らかなのでそこら辺が未整理なまま議論されるところが日本らしいところです。

ところで、この事件は目くらましとの指摘が有ります。重要な法案や対外施策が、国民の目の届かないところで実行されてしまったとの話です。ある程度確証を得たら書きたいと思っていますが、事実ならば身の危険があるので悩ましいところです。

投稿: べンダソン | 2010/11/15 21:17

ベンダソン様 耐震偽装以来のご無沙汰です。
指桑罵槐...まさに当意即妙、ありがとうございます。

11/14のフジTV:Mr.サンデーという番組では「【今夜の一大事 】43歳保安官は“犯罪者”か“英雄”か」の特集。じきに、保安官家族にまでマイクを向けかけないマスコミ姿勢に呆れ返っています。それなら「那覇地検の鈴木亨次席検事は、"国賊"か"大岡越前"か」で圧力をかけた政府の愚策を曝すべき。あるいは中国人船長処分保留こそ検察審査会を適応せよと報道すべきと。

制度上処分保留では審査対象にならないのなら、検察"官適格"審査会に期待したいのですが。嗚呼、官適格審査会に親小沢の民主党議員がメンバー入りしたことで今度は検察官適格審査会もマスコミは指桑罵槐にしてしまう?

耐震偽装事件以後、政権交代で毅然たる日本に期待していたのですが"一大事"の舵取りを誤り迷走する政府と、相変わらず"棒"を追いかけるマスコミに苛立つばかりです。

投稿: 丸井太輔 | 2010/11/15 19:22

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